うちの家族は、パパ、娘、息子、私、おじいちゃんと、あとは施設に入っているおばあちゃんがいます。
おばあちゃんは、元小学校の先生です。そのせいか、口うるさいくらいに家族のことに口を出していました。おじいちゃんやパパの健康のこと、子供たちの勉強のこと…いつも心配はかりしていました。
そんなおばあちゃんが、ある日突然脳梗塞で倒れました。救急車で搬送され、命は助かったものの、後遺症により半身不随になってしまいました。それから一度も家に帰ることはなく、施設のお世話になっています。あれからもう、3年が過ぎようとしています。
施設に入ったばかりの頃は、とにかく家に帰りたいと言っていました。半身不随克服のために、リハビリも頑張っていましたが…残念ながら、今はほぼ寝たきりの状態になっています。
家にいたころは、とにかく勝ち気で何でも指図をしていたおばあちゃん…でも、今はとても穏やかです。
寝たきりで、テレビも見ず、本も読まず、何もせずに過ごす毎日…今日が何日かも分からず、外の天気も分からない、そんな毎日の中で、とりあえずは施設の職員の方との会話を楽しんでいるんだそうです。
それ以外の時間、長い長い一日に何をするか?というと、自分が子供の頃のことや、仕事をしていた時のこと…昔のことをよく思い出すのだそうです。
この間会いに行った時は、小学校の先生をしていた頃のことを、ひたすら反省していました。私は何もできない先生だった、石頭で考えが回らないし、私に教わった子たちはかわいそうだ…そんなことばかり言っていました。
それでも、仕事をしながら必要な資格を取りに行ったこと、仕事が終わって疲れて帰った後に資格の勉強をするのが本当に辛かったことなどを教えてくれました。
おはあちゃん、今は寝たきりで毎日つまらないとは思うのですが、今までの人生をあれやこれや振り返る姿は、実に穏やかなんです。いろいろな経験をしてきたおばあちゃんだからこそ、振り返ること、思うことがたくさんあるのだと思います。
そして、私はこのおばあちゃんと話す時間が、とても愛おしく感じるのです。姑と嫁だからこその、互いに遠慮をしつつ、気づかいの保てる関係…私は実の母親との間に複雑な感情を抱えているのもあって、おばあちゃんとの関係は心地よく、おばあちゃんの昔話は愛おしく思えます。
BONNIE PINK の「ほほえみの糧」という歌の中に、こんな歌詞があります。
若かりし日を想う archaic smile
老人は何を悟るのか
尖った人生は 辛いのか
経験というものを全て
ほほえみの糧とするのか
苦い思い出は 昇華するのか
How can you smile?
Where does the smile come from?
いつの日か黄昏て 美しく見えるのか
灰色の歳になって バラ色にほほえめたらいいけど
私が灰色の歳になる時…
穏やかにほほえむことができているでしょうか?