樹安の日々インスピレーション

日々の生活の中での気づきを、徒然なるままに

友情のおはなし

先日見たとあるテレビ番組で、とっても素敵なエピソードを紹介していたので、シェアさせてもらいますね。

私が小学生の頃にブームになっていた女子プロレス。当時人気絶頂だったクラッシュギャルズ長与千種さんと、悪役レスラーだった極悪同盟ダンプ松本さんとのお話です。

 

もともとは悪役志望だった長与さんと、アイドルレスラーになりたかったダンプさん。皮肉なことに、2人が与えられた役割は真逆のものでした。それでも2人は、それぞれが与えられた道を極めるべく精進します。

長与さんはファンの方に喜んでもらえるように、ヒーローとしての強い自分を演出し、プロレススタイルもアクロバティックでダイナミックなものを取り入れていきます。相棒のライオネス飛鳥さんとともに歌も歌い、一躍アイドルレスラーとなります。

一方でダンプさんは、悪役を極めるべく嫌われ者に徹します。鉄パイプ攻撃、チェーンで首を絞める、相手をフォークで刺す…もうやりたい放題。レフリーも極悪同盟お抱えの阿部四郎さんなので、反則行為をわざと見逃します。対戦相手のファンの非難、悲鳴が轟きますが…そんなの関係ありません。

ある意味わかりやすいヒーローと悪役の対決…当時の女子プロレスは大人気でした。この2人が繰り広げた様々な試合、特に髪切りデスマッチは小学生当時の私には衝撃的で、今でもよく覚えています。テレビの前で夢中になって見ていました。

 

しかし…実は養成所で同期だった2人。駆け出しレスラーの頃は仲良しだったのです。でも、対決していた時期は本当に仲が悪かったそうで、会社の人にそれぞれの悪口を吹き込まれてもいたそうです。

そして、特にダンプさんは徹底して憎まれ役に徹するあまり、実家に来てくれたプロレスファンの方を追い返し、サイン色紙もへし折り、お母様を悲しませてしまったそうです。実はプロレスを始めるきっかけは、経済的に苦しいお母様を助けるためだったのに、そのお母様に悲しい思いをさせている…それでも悪役に徹したダンプさん。凄まじいプロ根性です。

一方で長与さんも、果たして自分は本当にヒーローになれているのか?自問自答を繰り返していたそうです。特に髪切りデスマッチで、反則行為のオンパレードだったにせよ敗北し、ファンの目の前でバリカンを入れられたこと…こんな姿をファンに見せてはいけない、これで良かったのか…そんな思いに苛まれ、当時は本当に苦しかったそうです。

 

そして時は流れ、ダンプさんがプロレスを引退する日のこと。ダンプさんは最後まで悪役を貫くつもりでしたが…もともと優しい性格の彼女、最後の最後に堪えきれず、リング上で涙ながらにクラッシュギャルズのファンに謝罪したのです。

そして、何と最後に、ダンプさんは長与さんにタッグを組んでのエキシビションマッチを提案するのです。これに長与さんも応えます。今まで散々憎み合ってきた2人の、最初で最後のタッグマッチ…これにはファンも大興奮です。それぞれの役割を全うしてきた2人が、初心に戻って純粋にプロレスを楽しんでいる姿…特に試合後のダンプさんの清々しい表情…悪役に徹してきた彼女が初めて見せた、リング上での穏やかな笑顔、本当に素敵でした。

 

そして今、ダンプさんは再びリング上で悪役レスラーになっています。しかし、今の女子プロレスは昔のように人気があるわけではなく…困ったダンプさんが助けを求めたのは長与さんでした。

連絡をもらった長与さん、すぐに行動します。ダンプさんとともにプロレス興行を立ち上げ、今も2人で対決を繰り広げています。もちろんヒーローと悪役として…今もダンプさんは、長与さんの額にフォークを突き刺しています。

 

番組の最後に、出演していたファンの方からこんなお願いが…もともと悪役志望の長与さんと、アイドルレスラーになりたかったダンプさん、一度立場を逆転して、本来やりたかったスタイルでリングに上がってもらえないか、と…つまり長与さんが悪役、ダンプさんがヒーローになるのです。さすがに戸惑った2人、でもファンの要望ならと、前向きに考える…そうです。

それぞれが自分を信じ、自分のやるべきことを貫いたからこそ、今も互いに信じ合える2人。紆余曲折はあったにせよ、ずっと心の奥では繋がっている、本当に素敵な2人の友情のおはなしでした。

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