樹安の日々インスピレーション

日々の生活の中での気づきを、徒然なるままに

編曲のチカラ

私が大好きなEテレの番組「ムジカ・ピッコリーノ」、今日は年末の特別編が放送されていました。

簡単に番組内容を説明すると…「モンストロ」という架空の生き物に閉じ込められている楽曲を蘇らせるために、ムジカドクターと呼ばれる子供たち(音楽家の卵)や大人たち(プロのミュージシャン)が活躍する、というお話。毎回ひとつの楽曲を取り上げて、その曲のルーツを探ったり、楽曲構成を紐解いたりして、最後に登場人物みんなでその曲を演奏するのです。

取り上げられる楽曲は、ロックやポップスにヒップホップ、時にはクラシックや演歌、民族音楽なども登場します。番組最後の演奏では、大人に混じって子供たちも一緒に演奏するので、取り上げる楽曲によっては演奏のクオリティにばらつきがあります。ロックやポップスは比較的完成度が高いのですが、クラシック曲はやはりハードルが高いのかな?と思います。さらに、子供たちがヒップホップのラップにチャレンジした時は、全く様にならず…はっきり言って完全に失敗でした。

 

そして、今日の放送で取り上げていたのは、何とベートーヴェン交響曲第9番!いわゆる第九です。作曲当時、ほぼ耳の聞こえていなかったベートーヴェンが、絶望感から始まり、静寂を経て、歓喜に至る過程を、オーケストラに合唱を組み合わせて表現したのが第九です。こう説明してしまうと何の感動もないのですが、実際にオーケストラと合唱の合わさった壮大な演奏を聞くと、本当に魂が打ち震えます。素晴らしい交響曲です。

あまりにも有名な楽曲なので演奏される機会も多いのですが、フルに演奏をすると1時間近くかかり、合唱の入る第四楽章だけでも30分弱はかかってしまいます。そこで、有名なフレーズのみを組み合わせて短縮バージョンで演奏されることも多いのですが…残念なことに、編曲によってはせっかくの第九が台無しになってしまうことも多いのです。当時ベートーヴェンが感じたであろう絶望感や静寂を経て、初めてあの歓喜のメロディが活きてくるのですが…いきなり歓喜の大合唱から始まる編曲もあったりして…こうした「わかってない」編曲により、第九の本来持つ魅力が台無しになってしまい、非常にもったいないのです。

 

さて…ベートーヴェンの第九、確かに年末らしい楽曲ではありますが、ムジカ・ピッコリーノで取り上げるにはハードルが高すぎないか?最後の演奏は一体どうするのだろうか?と思いながら見ていました。でも…そんな心配は要らなかったようです。

実際に披露された演奏…短い時間の中に絶望があり、静寂があり、のちに歓喜の大合唱、そしてラストへと加速してフィナーレへと見事に繋がっていました。素晴らしい編曲でした。

さらに、演奏をした出演者の方々も素晴らしかったです。OKAMOTO'Sのオカモトショウさんがとてつもない歌唱力で子供たちを引っ張り、それに応じて子供たちも精一杯の歓喜の歌と演奏を披露…見ていて自然に涙が出ました。感動しました。

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久しぶりに、生のオーケストラ、生の合唱で、フルバージョンの第九を聴きたくなりました。