樹安の日々インスピレーション

日々の生活の中での気づきを、徒然なるままに

自分の人生を生き始める

うちの父親は花農家をしています。と言っても、花の種を作って毎年一定数を納めるという、ちょっと特殊な花農家です。

父親が中心となって花の種作りをして、母親はその手伝いをしています。なので、父と母との関係性も、普段から母のほうが父に従うという形を取っているし、決定権はすべて父にあるようです。

 

花の種は需要があるので、毎年一定額の、しかもまあまあ高額の収入を得ることができます。おかげでうちの親は、兄と私と2人とも私立の大学へ進学させるお金を用意することができました。

しかし、台風などの天候不順に見舞われたり、体調を崩したりしても、必ずノルマの分の花の種を納めなければいけません。このノルマが、うちの親にとってはとても大変だったようです。

 

そんな生活を何十年も続けてきた両親も、もうすぐ80歳を迎えようとしています。酷使してきた体は悲鳴を上げてきているし、精神的にも疲弊してきています。特に母親は、数年前からこの種作りをやめたいと、父にずっと訴えていたようです。

でも父にとって、元締めの農家さんから長年任されてきた花の種作りを、そう簡単にやめる訳にはいかなかったようで…自分の体力が続く限りはと、規模を縮小しながらも花の種作りを続けていました。

 

そして先日、母の体がとうとう悲鳴を上げました。全身に激痛が走り、数日間夜も寝られなかったそうで…整形外科で診てもらったら、何と首の骨が曲がっていたそうです。コルセットを装着した痛々しい姿の母を見て…父も何かを悟ったようです。今手掛けている種の分を納めたら、花の種作りから引退するつもりだと、元締めの農家さんに伝えるそうです。

 

我が家はずっと、母が父の後ろについてずっと支えてきました。母は文句を言わずに父に従ってきました。

でも、何十年も花の種づくりに人生を捧げてきて…ある程度の蓄えもできて、そろそろ自分たちの人生を生きてもいいのではないか…と、母のほうから思い始めたのです。

そんな母の想いを、仕方ないじゃねえか…と、しぶしぶながらも受け入れた父親。初めて父のほうが、母に従ったのです。

 

80歳を間近にして、ようやく自分たちの人生を生きようとしている両親の話を、私は感慨深く受け止めながら聞きました。

実は私にとって、うちの親は毒親の部類に入る親であり、今までは子供の私になんて有無を言わせないところがあったのですが…こんな話をしてくるなんて、お互い歳を取ったのかもしれませんね。

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そして私自身も、自分に無理をしている今の仕事をやめるつもりでいます。私も自分の人生を生きようとしているタイミングで、両親のこんな話を聞けたこと…何ともいえない気持ちになりました。